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コロナ危機後のより良い社会に向けた
革新的かつ責任ある企業行動に関する基本アクション
(COVID-19&BHR 基本アクション)

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基本アクション全文

​Purpose and Background

​趣旨・背景

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の世界的大流行が企業活動に加えて、ステークホルダーの人権にも深刻な負の影響を与えています。子ども・高齢者・女性・障がい者・外国人などの社会的に脆弱なグループには、特に大きな影響が生じることが懸念されています(調査レポート「新型コロナウイルス感染症拡大の人権への影響と企業活動における対応上の留意点」参照)。

 企業の経済活動と人権双方が危機に直面している状況において、いかにして、ビジネスと人権に関する国連指導原則に基づき、国家が人権を保護する義務を果たし、また企業が人権を尊重する責任を果たしていくことができるかが試されています。指導原則は、OECD多国籍企業行動指針及びILO多国籍企業宣言と共に、企業に対し、人権を尊重し責任ある企業行動を促進するために、人権への影響を評価し対処するというデュー・ディリジェンスを要請しています。企業の経済活動や国民の生活・雇用を維持するための政府による施策に加えて、企業にもステークホルダーとの対話・協働を通じて人権への負の影響の拡大を可能な限り緩和できるように革新的な工夫や責任のある行動が期待されています。

 コロナ危機後のより良い社会に向けて、企業がステークホルダーの人権尊重に根差した価値観を共有し、これを実践していくことは、企業を真の意味で持続可能で、社会に価値を提供し、またその責任を果たすものに変革する機会を提供しています。このことは、企業の危機に対するリジリエンス(回復力)を高め、事業の継続性を強化し、中長期的に企業価値を高めることにもつながります。

 そこで、この基本アクションは、日本企業が、コロナ危機において、指導原則に準拠した責任のある企業行動をとるために実行することが期待される10の行動を挙げたものです。この基本アクションに基づく行動をとることは、責任ある企業行動及びサプライチェーンを推進することにつながるとともに、「誰一人取り残さない」というSDGs(持続可能な開発目標)の理念にも適います。また、ESG(環境・社会・ガバナンス)投融資コーポレートガバナンス・コードなどに沿う取組みにもつながります。

Formulation Process

​策定プロセス

 この基本アクションは、企業法務から人権擁護までそれぞれの専門分野で活動している弁護士・研究者から構成されるビジネスと人権ロイヤーズネットワークにおいて取りまとめを行いました。
この基本アクション策定・普及にあたっては、責任ある企業行動及びサプライチェーン研究会グローバル・コンパクト・ネットワーク・ジャパン及びビジネスと人権ロイヤーズネットワークが幹事協力団体。企業・投資家・市民社会・国際機関などのマルチステークホルダから構成。)からもご支援・ご助言をいただいております。また、機関投資家その他各界の関係者の方々からも、基本アクションをふまえた企業の取組を歓迎する旨の応援メッセージをいただいております。
 この基本アクションをふまえ、今後、多くの日本企業その他のステークホルダーの皆様におかれて、コロナ危機克服のための革新的かつ責任ある企業行動に向けた取組や議論が進んでいくように、ご支援・ご賛同をお願いします。

 また、今後の状況の変化や皆様からのご意見をふまえ、基本アクションの内容も改訂を検討していく予定です。

Basic Actions

​基本アクション

 日本企業は、コロナ危機後のより良い社会に向けて、ステークホルダーと対話・協働しながら、以下の10の責任ある企業行動に関する基本的なアクションを踏まえた取組を行うように努め、その取組状況を可能な範囲で開示することが期待されます。この取組に当たっては、企業及び社会双方のレジリエンスを革新的な方法で高めていくために、企業の経営陣がリーダーシップを発揮しガバナンスを強化することが期待されます。

1.影響評価

企業を取り巻くステークホルダーへの新型コロナウイルス感染拡大の影響を、自社及びサプライチェーンの労働者への影響を含めて、評価する。

2.安全衛生の確保

労働者に対し、感染防止及びメンタルヘルス維持の観点から、安全衛生措置を見直し、確保する。

3.雇用の継続

労働者に対し、可能な限り雇用を継続し、休業がやむを得ない場合には法律に則った休業手当を支給する。雇用の中断・終了その他の不利益処分を検討せざるを得ない場合には、労働組合や労働者の代表との対話を通じて、可能な限り、労働者への負の影響の緩和に努める。

4.サプライチェーンへの対応

可能な限り、サプライヤー企業への影響を緩和するための配慮(納期遅れの対応、適切なコスト負担、迅速・柔軟な支払いの実施、発注の取消・変更への対応)を行う。同時に、サプライヤー企業に対して、可能な限り、安全衛生・雇用継続の面で、その労働者への負の影響を緩和するように働きかける。

5.不安定な労働関係への配慮

外国人労働者、非正規雇用、ギグワーカー、インフォーマル労働者など不安定な労働関係に置かれている労働者が新型コロナウイルス感染拡大における影響を特に受けやすいことに配慮し、その影響の緩和に努める。

6.社会的に脆弱なグループへの配慮

労働者であるか否かに関わらず、子ども・高齢者・女性・障がい者・外国人・性的マイノリティなどの社会的に脆弱な立場におかれるリスクのあるグループは、新型コロナウイルス感染拡大における影響を特に受けやすいことに配慮し、特にその影響緩和に努め、また差別・偏見を防止する。

7.苦情処理・問題解決体制の整備

サプライチェーンの労働者などのステークホルダーからの問題提起・苦情申立に対し適切に対応し、救済へのアクセスを確保するために、新たな窓口を設置する又は既存の窓口を強化する。

8.医療従事者及びエッセンシャルワーカーへの支援・配慮

医療従事者に対して保護具・医療資材その他の物品・サービスを提供するなどの支援を行い、治療薬、ワクチン、医療機器等の製造にかかる知的財産権の無償開放や人材育成のための投資を検討する。医療従事者及びエッセンシャルワーカー(生活必須職従事者)に対する差別・偏見を防止し、そのための取組を発信する。

9.プライバシーの配慮

政府による感染拡大防止のためのデジタル監視技術の活用を技術的に支援し、または情報を提供する場合は、プライバシーの観点からの検討を行い、プロセスの透明性を確保する。

10.パートナーシップ

新型コロナウイルス感染症がもたらした危機を克服するために、政府、企業、市民社会その他のステークホルダーと連携する。政府に対し労働者等の保護措置を要請すると共に、労働者等に対し政府の保護措置を紹介するなどしてその実施にも協力する。

Messages

​応援メッセージ

銭谷美幸氏 第一生命ホールディングス(株)経営企画ユニット部長 兼 第一生命保険(株)運用企画部部長 エグゼクティブ・サステナブルファイナンス・スペシャリスト

 

 新型コロナによる危機的な状況にあって、責任ある企業としての行動を投資家として期待しています。このイニシアティブに賛同し、その取組について積極的に情報開示された企業については、他社の範となると考え、前向きに評価したいと考えています。SDGsの「誰一人取り残さない」精神を、今こそ発揮してほしいと願っています。

松原稔氏 りそなアセットマネジメント株式会社 執行役員 責任投資部長 

 新型コロナ危機の状況の中、企業のサステナビリティと社会のサステナビリティの両立を目指す動きが強くなっております。当社も対話・エンゲージメントや投資家メッセージを通じて、企業をサポートしておりますが、責任ある企業行動及びサプライチェーン研究会などへの参加を通じてコロナ危機において企業の責任ある企業行動をサポートしてまいります。

近藤哲生氏 国連開発計画(UNDP)駐日代表

 持続可能な開発目標(SDGs)の理念のもとに、責任ある企業行動を推進する「COVID-19&BHR 基本アクション」に賛同します。UNDPは新型コロナウイルス危機を受け、企業が事業活動を営む上での人権リスクや影響を把握し、対応できるよう、「人権デュー・デリジェンスと新型コロナウイルス:企業向け自社評価簡易チェックリスト」を作成しました。同アクションとあわせて活用し、企業が積極的に人権リスクに対応し、持続可能な企業経営、そして誰も取り残さない社会を推進していくことを期待しています。

Commentary

​基本アクション解説

 基本アクション解説では、10の基本アクションのそれぞれについて、関連するルール・ガイダンス・ツール、企業その他のステークホルダーにおける取組や提言、留意点などを説明しています。定期的に情報を更新してまいりますので、皆様からの情報提供をお待ちしております。

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基本アクション解説

​News

​COVID-19 & BHR 関連ニュース

肘の挨拶

ビジネスと人権ロイヤーズネットワークは、国際機関・企業・投資家・市民社会などの皆様と共に、企業と社会双方のレジリエンスを高め、企業と社会の対話・協働を促進するための方策を議論するウェビナーを開催します。「コロナ危機後のより良い社会に向けた革新的かつ責任ある企業行動に関する基本アクション(COVID-19&BHR 基本アクション)」の発表・解説も行います。

株式

​ビジネスと人権ロイヤーズネットワークは、PRI(国連責任投資原則)、認定NPO法人ヒューマンライツ・ナウと共同で、株式会社ニューラルの協力を得て、ウェビナーを開催します。いま、新型コロナウイルス・パンデミックでESGの「S(社会)」に対する関心が非常に高まっています。投資家と企業の双方に、何が求められているのか。海外の動向も踏まえ、あらためて「S」にフォーカスした内容をお伝えします。

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​新型コロナウイルスの危機を3つの段階(準備期・対応期・復興期)に分け、段階ごとに、重要な行動や配慮すべき事項を提示する形で構成されており、人権に及ぼす影響を考慮し、対応するのに役立つ簡易で使いやすいツールとなっています。。

COVID-19&BHR調査プロジェクトのメンバーの弁護士らが日本語訳の校閲に協力させていただきました。

コビッド19

BHR Lawyers主催によるウェビナーにて、調査レポートの概要を解説させていただくと共に、吾郷眞一教授に新型コロナウイルス感染拡大下における国際労働基準の意義についても報告していただきます。

​Contact

基本アクション​問い合わせ先

​ビジネスと人権ロイヤーズネットワーク事務局 

(担当 弁護士 大村恵実 ・ 弁護士 佐藤暁子 ・ 弁護士 高橋大祐)
   Email: bhrlawyers.japan@gmail.com

   〒153-8902 東京都目黒区駒場3-8-1 東京大学9号館304B 
   持続的平和研究センター気付
   TEL: 03-5465-8842

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