各国政府が、企業などと協力しながら、デジタル技術を活用して、新型コロナウイルスの感染者や隔離対象者の位置情報等を収集し、その行動を追跡・監視する取組が広がっている。日本でも、政府が、民間事業者等に対して、新型コロナウイルスのクラスター対策に資する情報提供に関して協力を要請している。また、政府は、民間と協力して、新型コロナウイルス感染者と濃厚接触した可能性がある人に警告するスマートフォン向けアプリを提供することを発表した。
このような動きに対しては、政府が市民を監視することを許容し、個人情報の不正利用の危険性があるとして、NGO・メディアからプライバシー侵害の懸念が高まっている。Amnesty Internationalほか100以上のNGOが共同声明を発表し、デジタル監視技術の利用にあたり、人権を保護し過剰な監視を防止するための8つの条件を提示した。
このような懸念をふまえて、企業も、プライバシーに配慮した形での技術の開発・提供や感染拡大防止を目指す政府の取組への協力が期待されている。この場合も、企業活動の間接的な影響を含めて人権への影響を評価し、対処するための人権DDの枠組みを活用することが有益である。すなわち、追跡アプリなどのデジタル技術を開発・提供する企業においては、自社が提供した技術がどのように利用されるのかを確認することが重要である。また、企業が政府に対し、従業員や顧客などのデータを提供する場合にも、データ保護に関する規制を遵守することに加え、当該データがどのように利用されるのかを十分に確認することが重要である。Access Nowの提言はデジタル監視技術に関する官民連携上の留意点を整理しており、参考となる。
また、EUでは携帯電話追跡アプリに関するルール形成が進められており、その原則や要求事項と比較して自社が関係し得るデジタル監視技術にどのようなギャップがあるかを確認することも有益である。
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